紅の豚次郎「真砂女」の俳句旅

俳人鈴木真砂女の「銀座に生きる」をたずねて

バスを待つ間に

 「バスを待つこの道春に続く道」 (岩崎あや) 

 葉山から横須賀へ向かう海沿いの道、国道134号線。富士山も見え、楽しいドライブコースだ。長者ヶ崎や秋谷(あきや)の立石(たていし)など、海を満喫できる景勝地がある。

 葉山御用邸前から長者ヶ崎を過ぎると視界が広がり、右に海が大きく見えて来る。ある時横に座っていた妻が「ハート形のバス停があるよ」と言うので、指を差す方を見ると確かにハート形のバス停がある。

       f:id:hk504:20210330163321j:plain

 どうしてこのバス停だけ、こんなハート形なんだろう。近づくと、しかもただのハート形ではない。ワンピース姿の若い女性が海を向いて立っているように見えて来る。

 バス停の名前は「峯山(みねやま)」。    f:id:hk504:20210330163806j:plain

 束の間、彼女と二人でバスを待っているような気になる。

 青春時代の蠢(うごめ)きが、胸の内に湧いてくる。

 

 そういえば真砂女さんが亡くなったのは春頃だった。

 「如月のバスに潮の香真砂女逝く」 (國井みどり)

 そう、真砂女さんの命日は2003年(平成15年)3月14日だった。寒さの残る如月に追悼の気持ちが沸き上がったということか。

 秋の句ではあるが、バス停で詠んだのかと思わせる真砂女さんの句を見つけたのでご紹介しておきます。

 「いつも乗るバスの時間や秋の雲」  昭和35年真砂女)

 

 この峯山の次のバス停は「子産石」という。「こうめいし」と読むのだろうか。面白い名前で、何か言い伝えでもありそうだ。

 そのうちこの海岸沿いを歩いてみたくなった。