「夫を捨て家捨てて鯵叩きけり」 (平成7年鈴木真砂女) 豆電球が灯る薄暗がりの部屋に、膝頭をそろえ三つ指をついた母が頭を下げしばらく動かなかった。私は、ぼんやりと母の膝を見ていた。母は泣いているようだった。 何が起きているのか理解が出来なかっ…
「羅(うすもの)や人悲します恋をして」 (昭和29年鈴木真砂女) 黄色の薔薇が咲き始めた。その花言葉は「嫉妬」。 久しぶりに会ったS君は、やや元気がなさそうに見えた。いつも快活な男だ。彼は、テーブルに写真を並べた。 「どう思います?」。 一枚の写…
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