紅の豚次郎「真砂女」の俳句旅

俳人鈴木真砂女の「銀座に生きる」をたずねて

海の向こうにハワイが見える ⑴

 「はたた神栄螺は蓋を閉ざしけり」 (昭和56年 真砂女)

     f:id:hk504:20211030153207j:plain

 はたた神を漢字で書くと、「霹靂神」となる。晴天の霹靂(へきれき)という言葉の霹靂という字である。

 はたたは、激しい雷鳴を意味する。そこら中、周囲を打ち鳴らすほどの凄まじい雷をいうようだ。

 真砂女さんが栄螺を詠んだ句として、何気なく探し出したが「いやこの『はたた神』とは、もしかしたらある人を指しているのではないか」と思い始めた。

 その人物とは、この「真砂女」の俳句旅で以前ご登場いただいた鈴木政夫氏である。現在生きていれば、95歳。千葉県鴨川市にある鴨川グランドホテルの創業者。燃えるような情熱の持ち主であった。

 栄螺さえも、その大音声、その気魄に触れれば、恐れおののき蓋を閉じてしまうだろうということを詠んだのではないか。

         f:id:hk504:20211030155748j:plain

 決して、単純に怖いということを言っているのではない。この人の、その人生にかけた情熱が、唯一無二のものだからであると考えるのだ。

 真砂女さんが「はたた神」と詠んだ鈴木政夫氏の生き様を知ることで、真砂女さんの人生の側面を眺めることが出来るかも知れない。 

 最後にもう一句、栄螺が真砂女さんの気持ちを詠っている。

 「望郷の栄螺貌出すそぞろ寒」 (昭和57年 真砂女)

 ※「顔」は、もと眉目の間をいい、また目つきなどをいう。

  「面」は、顔前のこと。おもてがお。

  「貌」は、かおかたち。容貌。うわべ、みえ、表面なども。