ジオサイト中木へ(2)
安房鴨川の前原海岸と同じく、弓ヶ浜は日本の渚百選に登録されているが、二つの砂浜は性格が全く異なるようだ。
真砂女さんは、前原海岸は魂の原点と言えるほど愛しんだけれど、この弓ヶ浜も同様に魂のふるさと、休息の地だったろう。包み込まれるような、内省的な浜辺の曲線がじりじり焼けた心を落ち着かせる。
真砂女さんは、伊豆急がまだ開通していない戦後、修善寺から天城越えをしてこの弓ヶ浜に何回もたどり着いた。それは想像もつかないほどの難行苦行だったろう。しかも面会時間はわずかの一時間。※伊豆急の開通は昭和36年
石川さゆりの名曲がある。その一節。
隠しきれない 移り香が いつしかあなたに 浸みついた
誰かに盗られる くらいなら あなたを殺していいですか
寝乱れて 隠れ宿 九十九折り(つづらおり)浄蓮の滝
舞い上がり 揺れ落ちる 肩の向こうに あなた… 山が燃える
何があっても もういいの くらくら燃える 火をくぐり
あなたと越えたい 天城越え
真砂女さんの生きた時代背景を考えれば、相当の「罪」になるだろう。でも、人生80年としても日数に直せば29,200日。地球的な時の長さに比べたら、人の寿命はなんとはかないことか。
気が遠くなるどころの話しではない。私達人間の営みなど、一瞬のものでもない。
元「湊海軍病院」の跡地。「共立湊病院」の文字が見えた。
※後ろの建物はなぎさ園と思われる。
「すみれ野に罪あるごとく来て二人」 (昭和31年真砂女)
弓ヶ浜に寄りそう二人の姿が思い浮かぶ。ご縁で結ばれた二人。