紅の豚次郎「真砂女」の俳句旅

俳人鈴木真砂女の「銀座に生きる」をたずねて

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 そうかー 真砂女さんはその人の襟足に惚れちゃったんだね。
 卯波に来る長年の常連さんから「どうしてあんなつまらない男に惚れたんだ。」と口癖のように言われたそうだ。つまる、つまらないは私のみのことと返事していたようだが、確かに恋というものはそんなものかと思う…
 私たちは、しばらくFTさんのお話しを伺っておいとました。FTさんの屈託のない話しに気持ちが和んだ。きっとまっすぐな生き方をされてきたのだろう。「いつまでもお元気で。」
 「話すことなくとも愉し釣荵(つりしのぶ)」 (昭和30年 真砂女) 
 「誰よりもこの人が好き枯草に」 (昭和33年 真砂女)
 こんなストレートな句を詠まれては、何も言えないではないですか。
 でもなんでこんなに好き同士だったのに、一緒になれなかったのだろう。時代背景があっただろう。それぞれに複雑な事情もあったろう。
 「罪」の意識がぬぐい切れなかったのか。しょせん他人にはわからない。
 「罪障の深き寒紅濃かりけり」 (昭和26年 真砂女)
 「よき妻ならずよき母ならず鳥雲に」 (昭和57年 真砂女)
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 「男はつらいよ(昭和51年 寅次郎夕焼け小焼け第17作)の一場面を引用しておきたい。
 宇野重吉演じる画家の大家青観先生が、昔恋人関係にあった志乃さん(岡田嘉子)の家を訪ねる…
 「先日京都の個展であなたを描いた絵があったはずだが」
 「はい、気がついておりました」…「静かだねぇ」「でもねぇ、あんまり静かなのも独り暮らしには寂しゅうて」「申し訳ない」「どないして」「ぼくには、あなたの人生に責任がある」「和夫さん、昔とちっとも変わらしまへんな、その言い方」「いや、しかし…ぼくは後悔してるんだ」
 「じゃぁ、仮にですよ。あなたがもう一つの生き方をなさっていたら、ちっとも後悔してないと言い切れますか」
 「わたし、この頃よく思うんです。人生に後悔はつきものではないかしらと。ああすりゃぁよかったなあという後悔と、どうしてあんなことをしてしまったんだろうという後悔と」
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 静かな中木の港